〈製作のねらい〉

  「昔々、あるところにお姫様がおりました。白馬の騎士の王子様が来るのを待って、出会って、恋に落ちて…。」という作品は、「白雪姫」とか、「眠れる森の美女」等たくさんあります。しかし、そうではないお姫様の物語があってもいいと思った。『アリーテ姫』は、自分が美しいからとか、お姫様だから幸せになるのではなく、自分に自信のない彼女が、ちっぽけだけど、自分の存在には意味があることを知り、自らを信頼し、幸せに向かって歩き出してゆく、そんなお姫様を描きたかった。子供の選択肢のひとつとして、別の生き方を提案するエンタテインメント、自分で自分の中の魅力に出会うお姫様が是非とも欲しいと思い、この作品をプロデュースしました。

〈一番見せたい人たち〉

 中学・高校・大学といった自分がどう生きていくのか自分探しをしている人に。不安ばかりの社会に放り出された人に。自信のない人に。まだ何も行動してないのに、すべてを諦めてしまっている人に。結婚して、子供に、家族に、社会に縛られて自分の事が何もできないと、疲れきっている人に。いろんなものにとらわれて、自分の人生をつまらなく感じている人たちに観てほしい。そして是非伝えたい。今はまだあなたがかなえようとしている夢の途中にいるんだよ、ということを。自分の可能性をもっと信じて、そういえばこんなことがしたかった、ということを思い出してキラキラ輝いて欲しい。
 この作品『アリーテ姫』のメッセージについて話し合うと、私たちの琴線に問いかけ、いろんな角度から話が膨れ上がって尽きません。是非カップルで観にいって、観終わった後いろいろ話し合って欲しいし、それができる映画だと思う。

〈『アリーテ姫』という映画の存在〉

 見ることによって皆が力を得てくれて、それがこの作品の持っている力になってくれる映画だと思う。10年経っても褪せない、いつ見てもその時々の年齢で違う新鮮味を味わってもらえる、真実が宿っている作品を創れたということがプロデューサーとして嬉しい。財産であると思う。『アリーテ姫』を観終わった後で、自分も何か頑張ろう!! 帰ったらとりあえず部屋の掃除でもしてみよう!と思う気分にさせる作品にできたと思う。それが『アリーテ姫』という映画が持っているマジックなのです。

〈クリエーター集団 STUDIO4℃〉

 私達は、もともとジブリから出発してます。そこで『となりのトトロ』とか『魔女の宅急便』をやって、「トトロ」の作画監督・佐藤好春氏と、『AKIRA』の作画監督補・森本晃司氏と、スタジオを作ろう!といって、そこに「魔女」の演出補の片渕監督が賛同して、生まれたのがSTUDIO4℃なのです。だから『AKIRA』風で、『SPRIGGAN』、ジブリ風で、『アリーテ姫』なんだと思うんです。別にSTUDIO4℃カラーで作っているのではなく、モノを作るクリエーター集団の中にいろんな個性があると考えているのです。そういう意味では今回は『魔女の宅急便』の時のスタッフ(作画監督:尾崎和孝氏・作画監督補:浦谷千恵氏ほか、原画・動画・美術等)がたくさん参加してますので、ジブリの流れをしっかり受け継いで作られている映画だと思います。

〈監督へのメッセージ〉

 宮崎さんが彼のことを非常に気に入って、在学中から宮崎さんの作品に参加し始めたと伺ってます。宮崎さんが認めた能力や可能性が、これからもっともっと花開いていく監督です。これから何をどう描いていくのか本当に楽しみです。エンタテインメントという意味での宮崎駿を受け継ぐ人物だと思う。片渕監督とは、こう話しています。「今回は自分探しがテーマだったけど、次は不屈の魂をテーマにしましょう。」
 テーマは常に人間です。そして、その人間がどう生きていくか、それを片渕監督にはきちんと描いていって欲しいと思う。アリーテはきっと、そういう不屈の魂を持った人間に、今後育っていくのではないかと、思っています。




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