アリーテが開放されて頭の輪っかをはずすシーンのラッシュをみて「あれが簡単に取れるの?」との声が。孫悟空の輪っかじゃあないっちゅーに! そのあと「孫悟空の輪っかってなんて名前だっけ?」う…誰も思い出せない。雲や棒の名前はわかるのに。しばらくみんな仕事の手を休めて考え込んでしまいました。仕事しろっちゅーの!



 アリーテが最後のほうで魔法使いにかける魔法は、疲れもピークになってくるとよく自分にもかかったものでした。「目を閉じて…。そして思い浮かべて。自分が一番行きたいと願う場所を…。」「そうだなあ…。じゃあ、秋田県乳頭温泉の鶴の湯だ。白いにごり湯は暖かく…ススキの穂が風にゆれて…」ハッ!気がつくとここはまだ動画机の前!手つかずのカット!白いスケジュール表!!ガックリ落とす肩…。「アリーテ姫」ってもしかして疲れきって、でももうやりなおしのきかない年に入ったアニメーターの物語!? ボックスのようにひたすらあてもなく泥を掘るしかない未来なのか、アリーテのように自分の未来を意味あるものにするようもうひとがんばりできるかって事なのかな? うう…シビアな物語だ…(泣)。


 何人もの病院送りや亡命者を出し、社外の友人に「あれってまだやってんの!?」とあきれられながら製作を続けてきた「アリーテ姫」もついに2000年夏、作画の終了する日がやってきました。一ヶ月くらいは休みたい…と身体は願ってもアニメーターにはそんな贅沢は許されません。「今日打ち合わせ」のはずが「すいません、絵コンテがまだ上がらなくて」というヘビの生殺し状態の手あき期間が唯一戦士の休息時間なのです。 その「すいません、まだ絵コンテが…」状態がのびにのびて二週間。UP日はのびてないじゃないのよ(怒)!こうして開始からフルスロットルで次の戦場へとアニメーターは向かうのでした…。 と思ったら、アリーテのリテークの呼び出しが〜〜(狂)! ま〜じ〜で〜〜(号泣)?!!



 ゴールデンウィークももちろん休めません。 子持ちスタッフのため、下は1歳半から上は中学1年まで5人の子供を預かった○○プロデューサー。昼過ぎに様子を聞こうと○○さんちに電話をいれました。小3のうちの娘が出て、「みんな何してるの?」ときくと、「Kくん(1歳半)はテーブルの上(!)で牛乳飲んでる。Aちゃん(3歳)ラジコンカーで遊んでる。」「○○さんは?」「おばちゃんは疲れて寝てる。」バックでは悲鳴に近い○○家のビーグル犬の鳴き声…。いったい、○○邸ではどんな惨状が…(恐)。まあ死にはしないだろうとまた仕事を続けるのでした。


 冒頭の吹きガラス職人の取材には群馬県は谷川岳のふもとの月夜野びーどろパークに行きました。それから大量の水の流れを研究したいと吹割れの滝へ。山岳地帯も出てくるからと谷川岳のロープウェーに乗って、湯テルメ谷川でひとっ風呂浴びて帰りました。とても楽しい旅行…じゃなくて!ハードな取材でした。自費だからイイじゃん!



 2000年の4月、5月は大変な追い込みでした。 お花見もできません。この年になると(アリーテ原画陣の平均年齢はヒジョーに高い。30代後半、それ以上か?)季節の移りかわりを愛でるのが唯一の楽しみなのよ。シクシク(泣)。桜の写真を動画机に貼って泣く泣く頑張るのですが、ちょっと待ってよ、この状況って どっかで…? これってアリーテがボックスの地下牢にとじこめられて絵の具で描かれた青空を眺めていたのと同じじゃん!「去年はパーっと盛り上がったんだって…。ヤキトリなんか何本も食い放題だったって…。」「飲みたい…この人と酒を…私の本当の声で…慎吾ママのおはロックを…。」




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