丸十三年間つづいた保育園通いが、終わった。 ほんとうは月曜日まで通えるのだけれど、遊び友だちがみんな今週いっぱいで終わりになるから、自分も今日でおしまいにする、と娘が今朝、急にいいだしたのだ。 だから、カメラを持っていって、写真撮ろうよ、保育園の、と。 今日まで朝夕、定時どおりに送り迎えしていたのは三か所めの保育園ということになるのだが、市役所のどうした思惑からか、一番下の娘だけ、市を横切った反対側の保育園に通うことになっていたのだ。おかげで、六年間、何もなければ見ることもなかった町内を通り、買い物をする暮らしがつづいた。 保育園ともサヨナラだが、いつもまけてもらったその向かいの八百屋さんとも、食料品の買い物をし、娘が毎日100円の菓子を買ったスーパーともお別れ。その果物売り場の上には、もうしばらくの間だけ、娘が描いた絵が張られているはずだ。 サヨナラといえば、家族の誕生日ケーキを調達したケーキ屋さんのシーズンごとにかわる張り紙とも、そのケーキ屋の前をふらふら歩きまわる薬屋の犬とも、娘が頭をなでた焼き鳥屋の老いたおばあさん黒猫も、信号で車を止めるたびに寝そべっているのが見えた床屋の犬も、クリスマスにはダンシング・サンタクロースが腰を振っていたショーウインドウも、その前を通るたびに、正月の破魔矢、雛人形、五月人形で季節を教えてもらった人形作りおじさん夫婦の店とも。 同じ市内だからその前を通ることもまたあるだろうが、今日までの「毎日」の風景とは、それは確かに違っているだろう。 明日からは、生活が変わる。確実に。 |