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(2001年11月20日(火) 〜 2001年10月31日(水))

  カット数の話 2001年11月20日(火) 

 『アリーテ姫』は総尺100分あまりだが900カットに満たない。エンディングを含めても。テレビ・シリーズは一本約20分。そこに詰め込まれるカット数はそれこそピンキリだが、自分も以前は350カットはあるコンテを切っていた。それが、『名犬ラッシー』で280カット、『ちびまる子』『あずきちゃん』で190カット。どんどんカット数が減っている。無理に長回しばかり作っているつもりもないのだが。これは何なんだろう。『あずきちゃん』では他の演出家のために絵コンテを切っていて、「はい、Aパート」と手渡したら、前半だけで90カットなかったので驚かれてしまったこともある。 
 今、少し時間が空いたので、自宅の廊下に山積みになったままの『アリーテ』の原画を片付けている。乱雑に段ボールに詰めてあるうちは廊下を塞ぐかに思えた原画たちも、整頓してやるとそれほどの嵩ではない。しかし、これが2年間の血涙の賜物だと思えば、カット数が少ない方がより感慨深い。
 



  星降る夜に 2001年11月19日(月) 

 その年も、しし座から無数の星が降ると噂されていたので、寝袋を新調し、家族とともに山の中で寝転がった。ピークは地球の裏側に当たったらしく、約束されていた大流星雨に身を浸すことはかなわない。だが、いくつもの流れ星たちと、それに、天球を横切る大火球を見た。まるで音すら聞こえるほどの。
 だから、いちばん大きなボックスの流星には音がついている。あのシーンはその夜の復仇戦なのだ。ボックスの失意なんてあとからとってつけた。なにより流星雨が見たかったのだ。
 今年は自宅の布団にくるまって目醒めることも怠ってしまった。



  春の仕度 2001年11月18日(日) 

 夏の間に茂った諸々を掃い、ずっと前に買っておいたチューリップの球根を植え付ける。時期としては少し遅い。去年のまま埋まったままになっていた球根がもう芽を出しているのを見つける。
 ヨーロッパに旅したときに見た。一個の球根が掘り起こされもせず長年のあいだに地中で株別れ、一箇所から無数とも言えるチューリップの赤い花が湧き出しているのを。以来、チューリップといえば赤だけを密生させることにしている。我々が住むのはチューリップの故郷から遠い土地なので、あの風景は再現できない。



  待つ 2001年11月17日(土) 

 演出とは人の表現に対して行うものなのだから、ある意味受身の仕事だ。
 だれかから仕事振りを披露して貰えるまではひたすら待つことになる。だから待つことに身が慣れてきてしまう。編集の途中でちょっと込み入ったことになり、素材を並び換えたりする時間が出来ると、その一分間だけその場で眠る。「出来ました」の声で目を開け、何事もなかったよい指示を続ける。
 絵本を素材にした15分ばかりの短編映像を作っている。別々に録音したおじいさんの声と幼い子の声を編集機の上で始めて相見えさせてみる。小さな家族の空間がそこに生まれる。そうしたとき、実に楽しい。



  我輩は猫である、かのように 2001年11月16日(金) 

 次回作は「次回作」であって、題名はまだない。
 題名なんか考えてるゆとりもなく、ストーリーはほぼ完成。
 今回は「シナリオ」の段階は省略する。文字面で追い込んだつもりになっても仕方なく、むしろ縛りになってしまうのはわずらわしい。シナリオは実際上特に必要な作業ではない、とも言えるのである。具体的な表現の場で完成させてゆくのが、作品の身を引き締める。それは「即興性」に期待するということではない。いずれにせよ、もうひとつ先に「絵コンテ」という作業が控えているのだ。
 次は予算獲得と、メインスタッフの編成へと向かう。デザインワークが充実してくれば、一気に絵コンテへと進む。



  着々進行中 2001年11月15日(木) 

 プロデューサーのOK待ちをしている。次回作の大筋が固まったのである。
 『アリーテ姫』の終了以来1年少し、というのは時間をかけすぎた。あいだに色々と脇道へそれてみたりもしたが、そのいずれもがむしろ有益であったと思う。ただ、本筋を見つけるのに時間がかかりすぎた。だが、思えば『アリーテ』だって本筋を見つけるまでに、結果的に数年という時間をかけている。これが自分のペースなのかも知れないとも思う。
 物語を作る最初には、まずいくつかの「点」を思いつく。それが「線」に見えてくるまでひたすら「点」を並べていく。その混沌の中についに一本の「線」が見出すことが出来たなら、それを縦糸に張って、横糸を綴れ織る。今、何か一本が通りかけてきている。それが明日もまだこの目で確かめられるものなら良いのだが。
 現場的な仕事の速さには自信があるのだが、こうしたことには慎重になってしまう。 



  酔った勢いで喋る 2001年11月14日(水) 

 マッドハウス・アニメスタイル合同イベントで前に座らされる。
 マッドの丸山さんには大恩があるのだが、にもかかわらずマッドをおん出て『アリーテ』を作った身としては、ほんとうは顔を出しにくいところだ。なのに、そんな身構えをこちらにさせることなく、軽くいなして『アリーテ』を褒めて下さるあたりが丸さんの慕われる所以なのだ。身が二つあればよかったのに、と、つくづく思う。今、この現在も。
 今日は少し飲んでからマイクの前に出たので、いつもに増して心地良く喋れた。いや、何よりやはり丸さんと同席できたからだと思う。



  菊千代の出自 2001年11月07日(水) 

 黒澤明監督が『七人の侍』の準備作業で書き残したノートの一部を出版物で見る。
 当初三船敏郎が演じるはずだった「久蔵」から、最終的に演じた「菊千代」のキャラクターが派生してくる過程が良く判って興味深い。完成画面上では対極的なところに位置するこの二人は、元は根源的なカオスのなかでは一個のものであったのだ。
 その混沌とした原型は後年まで生き残り、別の場所で別の形をとって噴出している。だがそれでもまだ解消されないものが残ったらしい。作り手の内部には何かが巣くい続けるのだ。
 振り返って我がことを考えると、アリーテ姫で泣く泣くカットした3人目の求婚の騎士がささやかなれどどこかに生き残っていたりもする。



  大丈夫です 2001年11月06日(火) 

「風邪引いた」の書き込み以来お留守が続いてしまったのは、勝手ながら「この際睡眠時間を確保しよう週間」に入らせていただいたためで、別に臥せっているわけではありません。ご心配いただいてありがとうございました。

 ダビングの話はお休みして、今日の出来事。
 朝から北海道で発行されている雑誌の取材。いろいろな想いのこもった経緯からの取材だったのでなんだか心温まる。
 それからついに「アリーテムック本」の第1回打ち合わせ。ようやく端緒を掴めた、というところだが、編集長よろしくお願いいたします。
 夕方から、現在進行中の短編の録音。「5歳の男の子の声」が必要で4年生の女の子に来てもらって録る。昔自分がやった仕事の中で巡り合われた声優ご夫妻のお嬢さんなのである。あの時には影も形もなかったのに、と感慨深い。




  いけません 2001年10月31日(水) 

本当に風邪を引いてしまいました。







 
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