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[ストレス大発散](2002年12月21日(土))
思うところあって「映画監督」と名乗るのは返上しようとしていた矢先だったが、そうもいかない一夕であった。
まず、大学時代の恩師に「学会」に誘われたのである。
同じゼミの数期先輩に当たる心理学の先生の、アニメーションの表現の心理学的検討はとてもおもしろかった。テックス・アベリーのキャラクターが仰天して飛び出した目の飛び出し長や、あごが抜けた口の全開度にゲージを当て数値化し、その与える印象を分析するお話も底抜けにおもしろかったし、様々なキャラクターの歩きを「自然・不自然」、「軽快・鈍重」で縦軸横軸にとって分類したときそれぞれの象限が「ファンタジー」「写実的」「ディフォルメ」「抽象的」という特徴に類別されるという説も興味深かった。
その後、懇親会ということになってビールで乾杯となったのだが、そこでひとりの学生が近づいて来た。
「アリーテ姫、見ました」
「あ、それはどうも」
「ビデオで。ビデオの回転率いいみたいですね」
「おかげさまで」
「でも、僕はあの作品を認めません」
「ナニヲッ!」
大体において、水エタノール噴射中の映画監督、しかも自作をビハインドに背負った状態のそれに対し、未熟な人生経験を根拠に立ち向かうことで自己主張しようだなんて、世間知らずにも程がある。それを許してはこの子のためにならないっ。云って聞かせることにする。たちまち上がるブースト圧、拳はテーブルをバンバン連打する。恩師はこちらの肩を叩き、「もっと云ってやってくれ」とかニヤニヤはっぱをかけて来る。
なんだか後ろで笑う人が手招きしてるので行ってみたら、学生時代の助手の先生であった。
「あいかわらずだねえ。変わんないねえ。熱いねえ」
そうだったのだろうか。顔を覚えていてもらえるのも意外なぐらいである。自分では大人しやかに目立たぬ学生でいたはずなのに。これはいけない。それにしても、帰り道気づくと、カラオケでがなりまくったあとのように喉が痛く、しかもなんだかストレスが発散されている。ますますいけない。
とはいえ、新設の東京工芸大のアニメーション学科の入試面接で、「アリーテ姫のような作品を作りたくて」という受験生が出たそうである。それみろ。ザマをミヨっ!
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