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[『アリーテ姫』今昔物語(6) ](2002年01月21日(月))
 佐藤好春さんに『世界名作劇場』の中核スタッフに戻ってきて欲しいという話が来た。一方で森本さんたちがオムニバス映画『MEMORIES』の1話と3話を作るために、吉祥寺に新しい4℃のスタジオが設けられている。六畳二間の民家はこの際閉じて、みんなそれぞれの道へ歩みだしてゆこうではないかということに相談がついた。
 僕は、栄子さんの旦那さんの会社の一角を間借りして、主な仕事としては従前どおりテレビシリーズの絵コンテの外注仕事をこなしつつ、『アリーテ』の準備を進めることになった。ほかにスタッフはなく、とりあえずお話作りである。場所は三鷹で、アニメーション制作の現場のある吉祥寺のとなり駅である。
 粗筋は割合に短期間で書いたように記憶している。冒頭からボックスに連れ去られるあたりまでは、その当時からほとんど変化していない。

 そういうものをもって、ときどき吉祥寺の4℃の栄子さんに見せに行く。ある日行くと、相談があるという。『MEMORIES』の大友克洋さんの担当分が『大砲の街』というのだが、大砲の資料を貸してくれないか、というのだ。どういうわけか大砲の本ならいくらか手持ちがあったので、お貸しすることにはやぶさかではないけど、ところで『大砲の街』ってどういう映画なの?
「全編15分を1カットで……」
「ええっ、そりゃあ無理だ」
「無理を承知で。片渕さん、アニメーションのカメラが画面の奥行き方向に移動するカメラワークって興味あるっていってたでしょ」
「難しいから興味あるって……」
「それもやろうとしてる」
「ええっ」
「……ところで……どう?」
 もう、『大砲の街』に頭を突っ込むしかないではないか。頭だけでなく、身のすべてを突っ込むことになってしまった。


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