CoolNote
戻る
[『アリーテ姫』今昔物語(3)](2002年01月16日(水))
その当時のスタジオ4℃。
子どもを保育園に送ってゆく都合上、僕の朝は一般的なアニメーション産業従事者よりだいぶ早い。午前9時過ぎには4℃に着く。六畳間の電気を点けると、床の寝袋がもそもそ動き出す。佐藤好春さんを起こしてしまったのである。けれど、いずれにせよ好春さんはこの時間には起きなければならない。好春さんはこれからジブリへ「出勤」しなければならず、ジブリは遅刻に対して罰金を科せていたからである。自宅が遠い好春さんは、ここで寝泊りして通勤時間を稼いでいたのである。
そんなふうに、メンバーはそれぞれ別々の仕事をやっていた。
たいがいはこの家に持ち込んでやっていたが、仕事によっては好春さんみたいに別のスタジオへ働きに行くこともあった。僕もここを拠点に東京ムービーやスタジオジブリに出稼ぎに出撃していた。
僕がこの場所に加わったのは、みんなより少し遅れる。その前の一時期には、別の会社で劇場用長編の準備をしていた。すでに20代の半ば頃から何回か劇場版の監督やそれに近い職に補せられかけいたのだが、一度として制作が実現すること無いままここまで来てしまっていた。
夢想ばかりを商売道具とする者にとって、現実が大きな壁のように感じはじめられていた。
戻る
Cool Note -i v4.5 CoolandCool