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[旅](2002年10月20日(日))
 日曜日、友人とともに時を越える旅に出た。友人は中世史に造詣深く、その舞台となった土地を訪れたいというので、道案内を買って出てしまったのだ。
『アリーテ姫』と違って、我が家の近所、ふたつの川にはさまれた南北20キロぐらいの土地の中世。
 700年前の地勢を想像しつつ軽自動車を走らす。神社ごとにいわれを読む。道路地図と地形図を見比べる。江戸時代以降の新しい集落を頭の中で打ち消し、その当時すでに存在していたはずの里だけにしてみる。地形の凹凸を読む。思いのほか古道の在り処がわかる。植生を思い浮かべてみる。水場はどことどこにあるか。あの丘に陣はあったのか、なかったのか。
 以前通勤に使っていた幹線道路は森の中の一本道に姿を変え、狼の唸り声までが聞こえて来る。毎日子どもを保育園に送る道が、合戦のための進撃路に変わる。軍勢はこの道を通っただろうこと、なぜその道でなければならないかがわかった。わずか数日の戦争で滅亡した王朝の事情が垣間見えたような気がした。
 驚いたことに、自分がふだん何気なく通るごく近所の交差点が交通の要衝であり、3000の兵士たちがそこで敵を待ちうけ、命がけで守るべき軍事上の重要拠点だった。
 たった7時間の彷徨ののち、日暮れとともに帰宅した頃には、すべての風景が変化していて、実に面白い。


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