城下の町には仕立て屋のギルドがあり、様々な職種の職人たちには親方から徒弟に至る仕事上の序列が出来上がっている。 「アリーテは為政者として国を治める立場に戻るべきだった」という感想が時々あるのですが、城下の民たちは自分たちの秩序を完成させ、すでにそれなりの生活を確立しています。戦は古い時代の出来事として記憶され、町には平和が根ざしている。 職人として物を作るのも職能ならば、その上に位置して施政に携わるのも同じく職能でしかない。すでに世情が安定しているのならば、為政者に英雄は要らずひたすら事務的であればそれでよいのです。 ゆえにアリーテは姫君という「職」を離れ、「この手に出来るもの」を探しに旅立つことが出来る。 そうしたことの土台となる城下町の市民秩序のことは、阿部謹也さんの御本に出会うことで思いつくことが出来ていたように思うのです。 |